田辺の三偉人

和歌山県田辺市には「田辺の三偉人」というものがあるといいます。

古い順から、武蔵坊弁慶、南方熊楠、植芝盛平だそうです。弁慶さんは義経の家来ですから、弁慶と南方先生の間にはずいぶん間が空いていることになります。その間、田辺には偉人はいなかったんでしょうか、なんて余計なことはさておいて、三人目の植芝盛平は合気道の開祖です。こちらも偉いお方です。

その開祖は若い頃に、森林破壊を伴う、というか、それを目的にしたというか、いわゆる神社合祀政策が推進されていた頃、それに「切れた」南方先生が地元で孤軍奮闘の反対運動を起こされたときの青年団長的子分であったということです。

 

植芝先生がはじめられた合気道は試合のない武道です。おねがいします、ありがとうございましたと挨拶、お礼をいいながら、いつもいつも稽古を繰り返しているだけです。ですから、合気道は絶対にオリンピックの種目にはならないでしょう。メダルの出しようがないですものね。

こんな試合のない武道が世界中に広まっているのです。どこかに国際的な共感をえられる、人類普遍の魅力が隠されているのではないでしょうか。

 

勝負しない、ですから勝敗という結果は残らない。どや顔も、悔し涙もない。世の中にはこんな武道もあるのです。

ちょっと無理矢理ですけど、こういう武道のあり方を生態学の用語でいうとどうなりますか。「競争関係」でしょうか、「共生関係」でしょうか。それとも……?

 佐々木進市