オゾン層はどこにあるの?、大気境界層より上だよ

「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」の第一条に「この法律は、国際的に協力してオゾン層の保護を図るため、オゾン層の保護のためのウィーン条約(以下「条約」という。)及びオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書(以下「議定書」という。)の的確かつ円滑な実施を確保するための特定物質の製造の規制並びに排出の抑制及び使用の合理化に関する措置等を講じ、もつて人の健康の保護及び生活環境の保全に資することを目的とする。」と書いてあります。

小学校に環境出前教室などでおじゃましますと、質問がでます。「オゾン層はどこにあるの?」

この場合、条約、議定書、法律は、みんなつながっているものと解釈して,その大本である条約の第1条定義にある「オゾン層」の定義を説明すると、かなり面倒なことになります。というのは、生徒も先生も「成層圏にある」という答えを期待しているからです。しかし、条約の定義(和訳)では『「オゾン層」とは、大気境界層よりも上の大気オゾンの層をいう。』となっているばかりでなく、大気境界層は成層圏ではなく対流圏の下の方(地表面)にあり、かつ、生徒や先生の多くは、そのことを知らない/知らされていない、という現実が待ち受けているのです。

 

話しは、さらに面倒になります。

気象庁のホームページでは、オゾンの約90%は成層圏にあり、このオゾンの多い層を「一般的に」オゾン層というと説明しています。

http://www.data.jma.go.jp/gmd/env/ozonehp/3-10ozone.html

すると、オゾン層の定義には、「一般的」と「一般的でない」ものが存在することになります。「これが一般的である」という、辞書的な定義と、『「オゾン層」とは、大気境界層よりも上の大気オゾンの層をいう。』という国際条約の厳密な定義は、どちらが優先的に国民の知るべき定義でしょうか。私の場合、どちらも、大切ですから、条約ではこうなっていて、一般的にはこうなっていると説明することにしています。「シンク・グローバリー」なんていいながら、我が国が進んで約束した国際条約の、それも条約のタイトルになっている「オゾン層」の定義を知らせないのは「大変まずい」と思うからです。‥‥なんて、どうしてもこういう場面に出会うと、自然に熱を帯びてしまう私であります。「崩壊熱」かもしれません。あるいは、かわいい生徒の前で、孤軍奮闘、しどろもどろになるところは「プラズマ状態のわたし」といった方が適切でしょうか。

 

さて、両方説明したい理由がもう一つあります。対流圏のなかに、「大気境界層」や、さらにそのなかの下の部分である「接地(境界)層/キャノピー層」があることを知っていないと、現在、北京やデリーでも大問題になっている大気汚染や、毎年私たちが悩まされる熱帯夜などをはじめ、地表付近でおきているさまざまな現実を理解しずらくなると思うからです。もちろん、専門の方は「普通に」知っていることなのですが、「一般の人」こそ、「いま」自分たちの身に起きていることを正確に知る必要が、そして権利があると思うのです。

「熱圏はとっても熱いから熱圏というんだよ。それでね、その温度は何度かというと‥」なんて、不正確なことを教えるくらいなら、代わりに、大気境界層の知識をわかりやすく教えるにはどうすればいいかに苦闘したい「わたし」です。

お後がよろしいようで。

 佐々木進市